『ひかりふる路』感想の続きを書いてみる
こんにちは。はぴごろもです。
また思い浮かんだことなど、ちょっと感想の続きを…
『ひかりふる路』はフランス革命という激動の中でいろいろな対比が描かれています。
・愛憎
・友情と裏切り(に見えるのも含む)
・光と闇
・理想と現実
・都市と田舎
・過去と未来
・貴族とサン・キュロット
・戦争と平和
・血気盛んな若手議員と老獪なフィクサー(タレーラン)
・政治のイデオロギー・アプローチの違い
・国内情勢と外国勢力
などなど。
そしてそれぞれがとても深いですね。
いろいろと考えさせられるところが多いのですが、
とても書ききれないので絞ります。
どうしよう…(笑)
「理想と現実」
ロベスピエールが恐怖政治へと走ることになったきっかけに「理想と現実」の乖離がありました。
このあたりを考えてみたいと思います。
元々ロベスピエールの理想は争いや憎しみ・奪い合うことがない誰もが愛し合える素朴な社会であることでした。
始めは死刑廃止法案や犯罪者の親族への刑罰を禁止する法案なども出していたロベスピエール。
当時としてはとても先進的だったようです。
作中でも新たな徴兵に反対していました。
しかし、貧困・内乱・諸外国との戦争・党内分裂・これ以上にないほどの問題が次々と勃発。
それが現実。
理想とは結果。または結果に近い形。
現実問題、これらを一朝一夕に解決するのは非常に困難です。
快刀乱麻を断つように一気にバッサリ解決はできないものです。
しかも解決するスピードよりも速く崩壊してゆく。
もがけばもがくほど、蟻地獄のように闇に飲み込まれていくよう。
それだけ負の力は強かった。
ダントンにも
「現実の前では理想なんて無力なもんだ」と言われる。
「ならば、その理想に力を与えてみせようじゃないか」
毒には毒を。
負には負を。
闇には闇を。
すべての負の力を凌駕するような絶対的な力。
「徳なき恐怖は忌まわしく、恐怖なき徳は無力である」
恐怖政治の宣言です。
ちなみに時代は遡り、フランスのパスカルも死後に出版された「パンセ」の中で、
「力なき正義は無力なり、正義なき力は暴力なり」
と言っています。
余談ですが、空手家の故大山倍達(ますたつ)も
「正義なき力は無能なり。力なき正義も無能なり。」
という言葉を遺しています。ちょっと思い出しました。
「技は力の中にあり」
という言葉も遺していますが、机上の空論にならないように政策に実行力が必要になってくるなあと関連して思い出しました。
そう思うとダントンが秘密裏に行おうとしたイギリスへの送金は狙いは良かったのではと思います。
そうした裏の取引・諜報・謀略・金…
多方面に渡る力。
汚いですが、混沌とした世には表舞台の理想論だけではとても収拾がつかなかったでしょう。
これまでの戦争での戦費。ブルボン朝が作った莫大な借金。
あらたな問題勃発でそれらの経済問題・貧困問題を解決できなかったことに、行きづまったか。
自分がなんとかしなければ、なんとか解決してみせる!という思いが現実を目の当たりにし、恐怖政治へとなったのでしょうか。
もし恐怖政治ではなかったら?
恐怖政治の結果、暮らしが特段向上したわけではなく、恐怖に怯えて暮らす世になります。
では、もしも恐怖政治ではなかったら。
なにも策を講じなかったのなら。
フランスそのものの分割または最悪滅亡の可能性もあったかもしれません。
ポーランドの場合
同時期のポーランドという国に目を向けてみます。
現在はさほど大国ではないポーランドは、14世紀は国土も広く、大国でした。
しかし賄賂や諸外国の侵攻で弱体化していきます。
18世紀中頃は、ヨーロッパ情勢はロシア・オーストリア・プロイセン・フランス・イギリスという「五大国体制」が確立されていました。
しかし後半からイギリスはアメリカの独立戦争、フランスはフランス革命で国力が落ちます。
その隙を狙い、他の3国が混乱しているポーランドを分割します。
ポーランドには抵抗する力がありません。
3回に渡る分割で1795年にポーランドは地図から完全に消えました。
その後もナポレオンの時にフランスの衛星国になったり、またロシアの支配を受けたり、その支配された側の扱われ方は想像を絶するものではないかと思います。
ポーランドが復活するのは第1次世界大戦勃発後、それもロシア革命がきっかけになりました。
力がなく、外国の利害に翻弄され続けた例として挙げてみました。
「自由かそれとも死を選ぶのか」
フランスはなんとか戦争を乗り切り、存続しました。
恐怖政治を肯定はしませんが、もしかしたらそれがなかったらフランスも分割され、地図から消えていたのかも…と思ってみた次第です。
なかなか一面を見ただけでは功罪の判断は難しいものです。
ロベスピエールは、
「憎しみ合い・争い・奪いあう連鎖を断つ、その連鎖を止める手立てを探している。その理を見つけることができるなら、私は私の命を差し出しても惜しくない」
と言っていました。
その手法は最終的に行き詰まり、有罪になりました。
しかし自ら堂々と刑を受けることで憎しみの連鎖を断ち切る希望を持ったのかも…
「仕方がない」で奪われる命があってはならないのですが、
フランスが諸外国に踏みにじられることを防いだことで愛する人の命を救ったのかもしれません。
難しいところですが、以上、歴史と作品から思った庶民の一つの考え、でした。
作品が素晴らしく、いろいろ考える動機になり嬉しいです。
もう少し思ったけどそろそろ区切りにしようかしら。(そういえば『琥珀』ももう少し書こうと思ってそのままだった)
お読みいただきありがとうございました。
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