映画館で映画を観るのが久しぶり
『窮鼠はチーズの夢を見る』を映画館で観ました。
だいぶ時間が経過してしまいましたが、感想を書こうと思います。
近年、映画館では宝塚のライブビューイングしか観ていなかったので、「映画館で映画を観る」というのが新鮮でした。
本編が始まる前に流れるいろいろな映画の予告。そういえば結構長いのですね。
怖い映画の予告を観るのに、ややストレスを感じます。
でも『ミッドナイトスワン』という映画の予告に元宝塚トップスターの真飛聖さんが出演されると知り、おおっ!と反応。
映画界でもご活躍されているのですね。
それと『望み』という映画の予告で「望海風斗?のぞ様♡?」と勝手に反応。
でも内容はサスペンスなので私は苦手そうだ。
宝塚の予告などは関心があるものばかりで美しい映像ばかりだから、安心してワクワク幕があがるのを待てるのですね。
あと当たり前すぎるのですが、映画は幕間がないことが基本。
これから休憩なしに130分も観るのか!と若干ドキドキしていました。
でも平日だったこともあり、お客は10人ほど。
しかも早々にお一人帰ってしまったのでさらに少なくなり。(性描写の場面あたりで)
映画館の経営的には厳しさが続いていると思いますが、個人的にはゆったりできた時間でした。
咲妃みゆさん銀幕デビュー!
さて、ワタクシのお目当ては元宝塚娘役トップスターの咲妃みゆさん。
主人公の大伴恭一役を演じる大倉忠義さんの妻:大伴知佳子役です。
すごいです!映画デビューおめでとうございます!
ちなみに原作コミックスの中では登場シーンはほぼ序盤のみで少ないです。
映画ではどうなるのだろうと思っていましたが…
「窮鼠はチーズの夢を見る」大倉忠義の妻役は咲妃みゆ、「眩しかったです!」https://t.co/D8WixvSkgd
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— 映画ナタリー (@eiga_natalie) August 12, 2020
ゆうみさん(咲妃みゆさん)、存在感たっぷりで非常に眩しかったです!
行定勲(ゆきさだいさお)監督のツイッター(8月13日)によると、
「咲妃みゆさんはオーディションで即決した逸材です!」とのこと。
ゆうみさんは映画出演にあたり、オーディションを受けていたのですね。
そして監督のイメージに合い、即決。さすがです~!
恭一の妻としてめちゃめちゃ可愛い存在でした。
愛らしいお姿の知佳子と柔和な表情の恭一。
休日のお買い物の様子は、傍からみればそれはそれは羨ましいばかりの若夫婦です。
しかしそれは、なんと…虚構だったのですね…。
恭一も知佳子も。
離婚の話を切り出すにあたり、ゆうみさんが演じる知佳子の心情の吐露がとても胸に迫るものが有りました。
いい雰囲気を保とうとする恭一の、うわべだけの取り繕いの気持ち悪さに、絞り出すように伝える。
彼女は彼女で離婚条件を有利にするために浮気調査をさせたり、自分も不倫したり、どっちもどっちなのですが。
それでも知佳子がそのような行動を取った遠因は恭一にあるのかなと思ったり、
相談できずに抱えてきた、彼女なりの心の闇を思うと、こちらも胸がチリリとなりました。
映画には原作にはなかった、知佳子にはシャワーシーンがありました。
知佳子のシャワー中、帰宅した恭一が何を思ったかいきなり開けてしまう。
原作の恭一なら開けないと思うのだが、
これも夫婦の形を保つためなのか?映画版では。
「バーン!」
「キャっ!!」
いきなりの行動に私もびっくりしまして(そもそもシャワーの音が聞こえているだけですでに動揺しているのに)
思わず、「あああっ!すみません!ごめんなさい!すぐに出ていきます!」と思ったものでした。(結局いたけど)
主人公たちのみならず、ゆうみさんも体当たりの演技でしたね。
いや、なんか衝撃的すぎて微動だにできず、その後ストーリーが進んでもずっとゆうみさんのシーンが頭から離れられませんでした。(免疫力なさすぎだろう)
理想的な夫婦像が壊れていく描写に、それもまた愛の一面なのだと感じました。
ゆうみさんの熱演を観ることができ、とても嬉しかったです。
キャストは素晴らしい!
大倉忠義さんや成田凌さんはじめキャストの演技はとてもよかったなあと思います。
なんといってもかっこいい。狂おしさの雰囲気が出ています。
セリフだけでなく、表情や視線、息遣いが真に迫るものがありました。
性描写は生々しく激しかったです。
服を着ているより裸の時間の方が長いかも?と思ってしまうほど多い。
ここは好みが分かれると思いますが、私は原作で感じた空気感を感じることができました。
生々しくも、音楽や照明で良い雰囲気になっています。
監督の手腕は随所に発揮されているのだろうと思います。
細かいところを言うと、初めてのキスはそんなにブチュっと行くかなあ?恭一はビビっているのだからそうっと優しくしてあげて。徐々によ…とか考えてしまったけど(雑念)、まあ好みですね。今ヶ瀬の積年の思いもありますよね。きっと。
キャストの方々は監督の指示通り忠実に体当たりの演技で表現しており、素晴らしかったと思います。
原作で涙した
ワタクシ、原作『窮鼠はチーズの夢を見る』(水城せとな)は涙を流して読みました。
読み始めは「おおう!がっつりなボーイズラブなのね!これにゆうみさんが出演?」
「共感を得る人が多いらしいけど、どうかなあ?」
と思いながらでしたが、いやいや、こんなに入り込んで読んだコミックスは久しぶりでした。
創作物の登場人物に対し、普段は特に共感を求めないのですが、かなり共感してしまいました。
一般的に理想形とされる中に所属する安心感。
それを選んでいる自分への安堵。
理想であるための取り繕う、砂上の楼閣のような自然に見えて不自然な愛。
しかし突然考えもしたことのなかった愛の扉をこじ開けられる。
いつの間にやら新たな愛に視点を集中させた心地よさ。狂おしさ。
なんでも受け身の「流され侍」からの脱却。
受動から責任ある行動への成長。
新たな一歩へ。
恭一はその場の優しさがたたってトラブルを引き起こしてきた人生でした。
しかしそこに偶然にも7年ぶりに現れた後輩今ヶ瀬。
今ヶ瀬は自分のプライドも社会的体裁もなにもかもかなぐり捨てて、身も心も「愛してる」と恭一にぶつかってくるのですよ。
恭一はそりゃ戸惑うしそれまでの生活と天秤にかけるし、いろいろあります。
流されながらではあったが、少しずつ内面では今ヶ瀬を愛し始めている。
体裁と自分に内に芽生える愛との葛藤ですよ。
最後はこれまでのように流されず、
自分が選んだ道に責任を持ち、パートナーの手引っ張って進んでゆく。
とっても素敵な愛の作品です。
違和感は脚本か
そんなこんなで原作が気に入ったので、自然と期待値を上げてしまいました。
ここからの感想はあまりいいものではないので、寛大な方のみお願いします。
先に言うと、原作とは別ものと考えたほうが良いと思います。
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正直に書きますと、映画版は原作で感じた私の思うところの重要ポイントが感じられなかったなあと。
恭一は最後まで成長が見られず、流されていたなと。
彼を愛した人は報われず、やっと報われたように見えた今ヶ瀬もきっとまた泣くことになるのだろうな、と感じてしまった。
恭一に最後まで責任感が見られなかったから。
もう一度見たら私の受け取り方も違うかもしれないけど、今回はそんなふうに感じました。
恭一は今ヶ瀬ほか、恋愛がこじれるたびに、
「なんでだよ」「どういう意味だよ」「何言ってんだよ」と逆質問形の返答をしている。
終始責任を持たない彼の弱さというよりずるさが際立っているように思います。
このあとのセリフもきっとそうなのだろうなあと、途中から気になってしまい、変に集中できなくなってしまいました。
原作では、その「流され侍」が最後の最後に変化するところが醍醐味の一つであり、見たかったのですが、結局なんだったのだろう?
エンドロールが流れた時、「え…?終わり???」というのが感想でした。
長らく映画を観ていなかったせいか、私の受け取り方に抜けがあるのでしょうか?
でも、途中寝てもいないし…おかしいな。
まあでも、すっきりしないのもまたこれはこれで愛のカタチなのですかね。(まとめ)
恭一…あなたはいったい誰なのだ?
脚本では何を描きたかったの残念ながら私には不明でした。
そしてさらに欲を言えば、原作にあるように狂おしい中にも、葛藤する恭一の内面が見たかったです。
原作ではたびたび、恭一の頭の中が面白く表現されているのですよね。
倫理観ある恭一と流され恭一がワーワー争って、結局大きい流れに流されたり。
ふとこれまでの流され具合の果にたどり着いた半生を俯瞰したり。
それらの葛藤こそが「流され侍:恭一」の憎めない重要な一面なのですよ。
それがないのが淋しいというか別のコンセプトを持った作品に生まれ変わったと言いましょうか。
ということでストーリーについてはあまり良いこと書けなくてすみません。
映画が終わった時に観ていたお客さんが漏らした一言は、「最○」でした。
ううむ。
まあそうなりますよね…恭一よ。
キャストたちの熱演に救われましたがほんと、脚本が謎でした。こんなに変わるのですねえ。
原作ありの実写化の難しさを感じました。受け取る方もそれぞれですし。
とにかく、美しいキャストたちや光景を観ることができたことがよかったです。
好きなキャストを愛でる上では良い作品だったと思います。失礼ながらあとで知りましたが、大倉さんはジャニーズの方なのですね。素晴らしい演技でした。
そして咲妃みゆさん、お疲れ様でした。
表現者として、やはりすごいお方です。
また映画でもお目にかかれると嬉しいです。
お読み頂きありがとうございました。
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