海宝直人&咲妃みゆ出演「青春アドベンチャー『ベルリン1989』」感想




海宝直人さん咲妃みゆさん出演オーディオドラマ!

こんにちは、子供たちが夏休みになると親は忙しさが増しますね。

日頃の学校や保育園の給食制度のありがたさを思います。

ここのところ週末はだいたい子供たちをプールに連れて行っています。

親も半強制的に元気にさせられていて(?)ありがたいことです。

元気で思いやりのある子に成長していって欲しいなあ。

 

さて、ここ2週間、子供たちが寝静まったあと、楽しみなことがありました。

NHKオーディオドラマ「青春アドベンチャー『ベルリン1989』」を聴くことです。

海宝直人さん、咲妃みゆさんが出演されました。

全10回に渡り放映された作品です。

ゆうみさんの声が聴ける!ということでワクワクして聴き始めましたけど、想像以上に物語の世界に惹きつけられました。

海宝直人さんと咲妃みゆさんは、ミュージカル曲のCD録音やコンサートでデュエットされていて、とても相性がいいように思います。

アラジンの主題曲「A Whole New World」をYouTubeで聴いたのですが、海宝直人さん咲妃みゆさんの歌声そして表情が素晴らしく、スタジオなのにアラジンとジャスミン王女が空を飛んでいるかのようなファンタスティックな世界が目に浮かぶようです。

そんなわけで、オーディオドラマも本当に良かったです。

 

『ベルリン1989』作:古川健

あらすじはざっくりこんな感じでした。

1989年秋のドイツ。冷戦の象徴であったベルリンの壁が崩壊し、東西の往来は自由になった。

西ベルリンの医学生ハインツ(海宝直人)は大学教授の頼まれごとで東ベルリンに入り、大学の校内で迷ううちに音大生アンナ(咲妃みゆ)に出会う。

密告者であったアンナの先生の過酷な過去、独裁者の側近の娘として国の崩壊とともに罰を受けようとするアンナ。

ハインツは監視と密告制度により踏みにじられた人々の心を知ることになる。

政治により愛や信頼関係を壊された国の2世代の男女のドラマが展開される。

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ハインツは気の置けない二人の友人とサッカーをしたりおしゃべりしたり。いい友人を持つって素晴らしい。

そんな友人がいるからこそ、イザというときに妙案が浮かんだり、協力して行動出来たりしたのだろう。

ハインツの大学教授アルベルト(鈴木壮麻)とアンナのピアノの先生ゾフィア(島田歌穂)はかつて恋人だったが、政治が二人をズタズタに引き裂いた。

アルベルトは恋人や仲間を捨て一人西に逃げたものとして。恋人でなかったら、亡命計画を立てていなければと思い、苦しみ続けた。

ゾフィアは家族のことで脅されて密告者として政府に忠誠を誓わされた。監視、密告社会は精神を荒廃させる。密告する側も加害者であると同時に被害者であると言える。

それぞれ長年自責の念に苛まれて、壁崩壊後も会うことすら拒否してきた二人をハインツや友人たち、そしてアンナが協力して再会させた。少々無茶な小芝居であったが、結果心の壁を取り払うことができたのだ。二人の間にはまだ愛が残っていることを若者は強く感じたのだろう。

若さ、仲間、無茶、おせっかいが固く閉ざした二人の心を氷解させた。かつて若者だったころ、愛と未来をしたためた手紙、数十年後への二人への手紙に宛てた未来に向かってまた静かに歩んでいくのだろう。時代や主義主張を超える愛を感じることができた。

再び会えた二人のようにハインツはアンナの苦しみも取り払おうとするが、心理カウンセラーでもないし経験値が少ない。そうはとんとん拍子にうまくいかない。

アンナの苦しみはさらに深刻であった。社会主義政治を推し進める独裁者の側近の娘、つまり「王国の姫」。実は西のファッショナブルな服も靴もなんでも手に入る暮らしだった。

それでも好きでそうなったわけではない。出世と預金残高にしか興味がない父を持ち、学校では遠巻きに白い眼で見られる。声だけなのだが憂いを湛えたアンナの表情が目に浮かぶ。

アンナは人々をボロボロにして国を崩壊させた側の人間として「簡単に許されてはいけない」と静かに罰を受ける覚悟でいる。

無邪気に夢を追いかけることはできない、と若いのに自分に制裁を科しているのはこちらも悲しくなってくる。

「王国の姫」から「階級の敵」の落差は雪と墨ほど違う。

ハインツに対して

「あなたは西の人だから。あなたにはわからない。」伝えた言葉が印象的だった。

実物の壁はなくなっても、自分さえ信じられなくなった心はそう簡単には回復できないのだろう。

アンナがドレスデンへと姿を消してから1年、友人ノラの情報でハインツは再会を果たす。

ハインツの成長も著しかった。なりたい医師像を見い出せないまま親のレールを漫然と歩む日々から、考える自分へ。

子どもであることを認め、わからないことを知る。アンナの苦しみが理解できなければともに苦しむ。わかろうとする、アンナを信じることから始める。ハインツも壁の向こうの荒廃した人々の心を知り、1年間悩んだことだろう。悩みもがいたが、希望の未来を拓くために自ら歩むという姿勢を見せた。愛の力はすごい。

「生きているから未来がある」

本当にその通りだと思う。

ハインツとアンナもよりよい未来へ進んでいったのではないか。

出会った頃は憂いを湛えていたアンナであったが、再会後にハインツに頼まれて弾いたシューマンに仄かな希望の光が感じられた。良い作品に出会えて嬉しかった。

 

いつの時代も愛は希望の光

ベルリンの壁崩壊から30年経つのですね。

それでもそんなに昔話ではない。

当時ニュースを聞いた時は、ベルリンは国境にあるのかと勘違いしていましたが、東ベルリンの中にある孤島のような場所。

アメリカ・イギリス・フランス・ソ連の4か国で分割統治をしたのですね。

その後の冷戦で翻弄された地、人々。

ちょうどベルリンの壁崩壊へ繋がることになった「ピクニック事件」についてちょっとネットで調べたところだったが、私は当時の人々の気持ちまで考えるに至っていなかった。

国家のイデオロギーに翻弄されたそれぞれの人に語りつくせない困難や苦しみがあったのだろうなあと、「ベルリン1989」に触れて思った。

作品は素晴らしかった。どこかで舞台化を期待したい。宝塚でも可能かもしれない。

どんな時代や政治体制でも愛は希望であり未来への光なのだなあ。まさに青春アドベンチャー。

 

海宝直人さん、咲妃みゆさんは本当に当時そんな人がいたのではないかと思うほどのうまさ。セリフだけでなく、間や呼吸、溜息など言葉にならないところがまた心に響く。他のキャストの皆さまもプロフェッショナルでブラボーです。

お読みいただきありがとうございました。

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